放射温度計で空気の温度は測定できるのでしょうか。
結論から言えば、放射温度計で空気の温度を測定することはできません。
もし、放射温度計で空気の温度が測定できてしまうと、
どんな物体の温度を測定しようとしても、空気の温度を測定してしまうことになります。
そのため、放射温度計には、空気からの赤外線エネルギーの放射がほとんどない8~14㎛の波長領域に
感度のある赤外線センサーが用いられています。
大気に含まれる気体は、大気中を通過する特定の波長の赤外線を強く吸収します。
特定の波長領域では、空気からの熱放射による影響を受けてしまい、
測定対象物の正しい温度を測定することができません。
上図で示したように、
波長が8~14㎛の領域は「大気の窓」と呼ばれ、
大気中の透過率が高く、大気による赤外線の吸収が低くなります。
つまり、この波長領域では空気からの赤外線エネルギーの放射がほとんどありません。
そのため、一般的な放射温度計では、8~14㎛に感度のある赤外線センサーを用いることで、
空気からの熱放射の影響を受けないようにしています。
つまり、放射温度計は、測定対象物の温度を正しく測るために
空気の温度が測定できないように設計されているのです。