熱中症は、気温が高い日中に発生しやすいイメージがあると思いますが、
意外にも夜間に多く発生しています。(下図参照)
東京都福祉保健局 東京都監察医務院:令和元年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】より作成
夜間や睡眠中に熱中症が発生しやすい原因は、主に以下の2点です。
1. 昼間に蓄積された熱
昼間の強い日差しによって、壁や天井などに蓄積された熱が徐々に伝わり、
夜間でも部屋の温度が高くなります。
2. 水分不足
睡眠中は水分補給ができず、汗や呼吸で水分が失われるので、脱水症状が起こりやすくなります。
また、夜間の熱中症にはヒートアイランド現象も関わってきます。
ヒートアイランド現象とは、郊外に比べ、都市部の気温が高くなることですが、
昼間よりも夜間の方がその気温差が大きくなるとされています。
下図は、東京と青梅のある5日間の1時間ごとの平均気温の比較をしたグラフです。
国土交通省気象庁:過去の気象データより作成
ヒートアイランド現象の主な要因としては、以下3つが挙げられます。
1. 人工排熱の増加
建物や工場、自動車などからの排熱、また夏はさらにエアコンの利用が増え、室外機からの排熱も増えます。
2. 地表面被覆の人工化
蒸散を行うことで大気の熱を奪ってくれる緑地が減少し、
代わりにアスファルトやコンクリートに覆われた地面が増え、熱をためこみやすくなっています。
3. 都市形態の高密度化
ビルなど中高層の建物が密集すると、風通しが阻害され、熱がこもりやすくなります。
特に夜間は、これらの要因の影響がより顕著になります。
1. 人工排熱の増加 ⇒ 夜間でも多くの家庭や建物がエアコンを使用することになると、
排熱が多くなりヒートアイランド現象の影響が高まります。
2. 地表面被覆の人工化 ⇒ 昼にためこまれた熱は、夜間にゆっくり放出され、気温低下の妨げになります。
3. 都市形態の高密度化 ⇒ 密集した建物が原因で天空率(見上げた時の空の見える割合)が低くなるため、
夜間の放射冷却が進まず、昼に蓄えた熱を明け方まで持ち越しやすくなります。
都市部でも郊外でも周囲の環境要因によって、熱中症リスクは異なります。
気温だけでは、熱中症リスクを正確に判断することができないため、
熱中症指数計を使用して、自身が生活をしている環境のWBGTを可視化することが重要です。
参考文献
東京都福祉保健局 東京都監察医務院:「令和元年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/oshirase/R01-heatstroke.html
環境省:「ヒートアイランド対策ガイドライン平成24年度版 ヒートアイランド現象とは」
https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/guideline/h24/chpt1.pdf